昨今では、ペットの地位向上にともない、ペットが亡くなった際にはお葬式や火葬をおこなうことが一般的になりました。葬儀や火葬の際に必要になってくるのが、ペット用の棺(ひつぎ)です。人間の葬儀であれば、木製の大きな棺が用意されます。
しかしペットの場合はどうでしょう?ペット用の棺には、段ボールや木材でできたものから箱状でないものもあり、その値段にも大きな差があります。
今回は、ペットの火葬に向いた棺の選び方や、ペットを火葬場に運ぶときの注意点、また火葬の際に棺に入れていいもの、入れられないものをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
ペット葬儀で必要な「棺」には何がよく使われる?
棺といえば、人間の葬儀では主に木できている棺が使われています。それでは、ペット用の棺にはどのようなものが用いられているのでしょうか?以下でご説明いたします。
天然の木製棺
人間用の木棺と同様に、天然木材の桐やヒノキで作られた棺が販売されています。顔部分に覗き窓がついていたり、布団が付属したりしているなど、より人間の使う棺に近いものが多いです。段ボール等でできた棺に比べると比較的値段の張るものが多いので、最期をこだわりたい人に向いています。
木の模様がプリントされた段ボール
ペット用の棺として売られているものに多いのが、段ボール製の棺です。箱状になっており、一部の製品はのぞき窓が付いているものもあります。木目がプリントされているもの以外に、青やピンクなどの単色や柄の入ったものも販売されているようです。
木製のものと比べると価格が抑えられるので、棺の他にこだわりたいものがある人におすすめします。
燃やせるけれど…手軽に用意できる段ボールや木はダメ?
一般的にペット用の棺として用いられる段ボールや木材ですが、実はお骨に悪影響を及ぼす場合があり、火葬に向いていない素材といわれています。
段ボール・木箱はお骨に悪影響なことも
通常の段ボールは火葬をおこなうと黒いススや灰が「お骨」に付着し、お骨上げの際に不便であったり、火葬炉の周辺に灰が飛散したりするなどの問題を引き起こす場合があります。
天然木材や合板でできた棺の場合は質量が多く、ペットの身体が小さいと遺骨をうまく残すことができない場合があるため、取り扱いをしていない業者もあるようです。
というのも、ペット用の火葬炉は、大型犬から小動物まで遺骨がキレイに残るように火力が調整されています。火力の調整された火葬炉では、段ボールや木材に燃え残りが発生する可能性があるのです。
大切なペットの遺骨をよりキレイに残したい人にとって、段ボールや木材は火葬用の棺として向いてないといえるでしょう。
燃やしても安心な素材を使った段ボール・木箱もあります
段ボールや木材は火葬に向いていないと上述しましたが、現在はさまざまなペット用の棺が開発されています。たとえば通常の段ボールではなく特殊な段ボールで作られた、ススや灰が発生しにくい棺が発売されています。
その他に箱状ではありませんが、化学繊維を使用した「おくるみ」のような形状の棺も販売されています。この棺は燃焼性の高い素材で作られており、燃え残りのススや灰が発生しません。またそのおくるみのようなデザインがかわいらしく、好評のようです。
さらに、特殊なフィルムを使用し遺体をある程度の期間安置できる棺も販売されています。こちらは完全密閉できるチャックと、特殊なフィルムを使用することで真空状態を保ち、ペットの遺体をキレイなまま一ヶ月程度安置することが可能です。
上から化学繊維を使用したおくるみをかぶせることで見た目にもかわいらしく、またそのまま火葬をおこなうことも可能です。葬儀まで時間がかかってしまう場合や、家族や親戚で集まってから葬儀をおこないたい方、またすぐには葬儀をおこないたくない方に向いている、最先端のペット用棺です。
段ボールや木箱はペットを火葬場へ運ぶ用に使おう
上述しましたが、遺骨がキレイに残るように調整された火葬炉では段ボールや木箱が燃えにくいため、斎場によってはそのまま火葬できないケースもあります。お花での飾りつけ等をおこなっても、火葬の際は遺体を取りだすことになってしまうのです。
その為、あらかじめ斎場・霊園等に確認を取ってから棺の用意をするか、段ボールや木製の棺は移動の際に使用し、別途対応しているものを火葬で用いるなどの方法をとるとよいでしょう。
ペットを安全に火葬場に運ぶ方法
では、実際にペットを運ぶ際は、どのようにしたらよいのでしょうか。これに関しては特に決まりがなく、布やタオルでくるんで抱えるほか、段ボールを使用する、生前使っていたキャリーを使用するなど、さまざまな方がいるようです。もちろん、事前に準備した火葬用の棺で連れていくのもよいでしょう。
棺を購入する前には、一度斎場や霊園等にどのような素材の棺であればそのまま火葬ができるのかを確認しておくと、トラブルを防ぐことができます。斎場や霊園によっては現地にて販売している場合もあるそうですが、心配な場合はインターネットを利用して準備するとよいでしょう。
また夏場や気温の高い日は、直射日光と高温を避けて、頭やおなかに保冷剤を当てながら運ぶなど、身体が腐敗するのを遅らせる処置が必要になります。
運んでいる際に、振動によって体液が出てしまう場合があります。口やお尻の下にタオルを敷くか、段ボールやキャリーを使用する場合はペットシーツを敷いてあげることで、周囲を汚さず連れていくことが可能です。
棺のほかには何が必要?ペット葬儀の準備リスト
ペットとの別れは突然かもしれませんし、余命を宣告されていたとしても、1日でも長く一緒にいたいと願うものです。ペットの葬儀をおこなうにあたって、どのような準備をしたらいいのか分からないというかたも少なくないのではないでしょうか。
こちらの項では、葬儀の際に必要になるものと、火葬をおこなう際に棺に入れたままでよい物と、取り出す必要のあるものをご説明いたします。
すべて揃えよう!ペット葬儀で用意するもの
■数珠……人間の葬儀に使うものと同じもので大丈夫です。催事場によっては貸し出しをおこなっているところもあるようです。
■ペットの写真……お別れ会やお焼香の際に飾ります。お気に入りの一枚を、印刷して用意しておくとよいでしょう。
■カメラ……最後のお別れとなるので、悔いのないように最後の姿を収めておきましょう。もちろん、携帯電話のカメラ機能でも問題はありません。
■遺品等を持ち帰る袋……棺に入れていたものの中で、火葬ができないものがあった場合に持ち帰ることのできる袋を用意しておくとよいでしょう。
仏具に関しては、葬祭業者が用意していることがほとんどのようです。
棺に「入れてよいもの」と「ダメなもの」
火葬の際には、棺と同様にその中に入れるものにも制限がある場合が多いです。おもちゃなどのプラスチックや金属製品、首輪等金具のあるものは一緒に入れられない場合がほとんどです。
【入れてよいもの】
■おやつ・フード……少量をティッシュなどに包んで。口元に添えてあげるとよいでしょう。プラスチック、ビニール等に入った状態のものは中身のみを一緒に入れます。
■お花……火葬にほとんど影響を及ぼさないため、問題ありません。身体の周りを飾り付けるように入れてあげるとよいでしょう。ただし、色の濃い花はお骨に色素が移る場合があるので、白色など淡い色のお花を選んでください。
■写真……寂しくないように家族の写真等を入れる場合は、通常の写真用紙ではなく普通紙に印刷しましょう。
■手紙……たくさんの感謝や思い出、愛情をお手紙にして入れておく方もいるようです。改めて紙に書くことで、飼い主の気持ちの整理にもつながるようです。
【ダメなもの】
■おもちゃ……生前遊んでいたお気に入りのおもちゃなどを入れてあげたいところですが、素材や大きさ次第では棺に入れることができません。ですので、どうしても入れたい場合は一度、斎場側に確認を取るといいでしょう。また、思い出の品として残しておくことも検討してみましょう。
■首輪……繊維が灰となって残る場合や、金具が残ることもありますので火葬できない場合が多いです。
■洋服……首輪と同じく、繊維が灰として残りお骨上げに影響が出るため火葬できない場合が多いです。ブランケットやクッション、ベッドなども同様です。
まとめ
今回はペット向けの棺について、その選び方や素材による注意点、棺の他に必要なものから棺に入れていいものなどをまとめ、ご紹介いたしました。
愛しいペットとの最後の別れ、悔いなく大切に送り出してあげたいところでしょう。大切なペットが亡くなってしまい、葬儀をおこないたいがどう準備をしたらいいかわからない方や、事前に準備をしておきたい方の参考になれば幸いです。