ペットロスとは、家族のように一緒に過ごしてきたペットが急にいなくなったことが大きなショックとなり引き起こされる症候群で、うつ病の一種です。ペットロスにかかると、疲労感や倦怠感を感じたり、後悔にさいなまれたりと、身体的にも精神的にも変化が現れます。他人には理解してもらえない、とふさぎこんでしまうこともあるかもしれません。
しかし、家族同様に長年をペットとともに過ごされた方にとっては、家族を失うのと同じくらいつらいことで、誰にでも起こり得る現象なのです。ペットとの思い出を楽しかったと思えるようになるためにも、ペットの死を認め、悲しみを乗り越えることが大切です。
ペットロスとは
ペットロスとは、ペットとの別れや死を経験した人が、その直後から後悔や喪失感に苛まれることを言います。家族や恋人、親しい人を亡くしたり、別れたりして失った時に悲しみや後悔で落ち込むことがあるように、ペットに対しても同様の感情を抱くのです。
何年間も共に暮らしたペットは、家族も同然です。譲渡や返還でも、病死や天寿を全うした結果でも、ペットがいなくなったことに対し悲嘆や後悔に暮れるのはごく自然で当たり前なのです。
ペットロスは、ペットと共に暮らしたことがある人ならば誰にでも起こり得ます。そのため、ペットロスとはどのような症状なのかを知り、重症に陥らず乗り越える方法を知っておきましょう。
ペットロスにかかりやすい人
ペットロスにかかりやすい人には、いくつかの特徴があります。それらの特徴を知っておくことで、ペットロスの重症化を防げるかもしれません。
ペットに依存している人
ペットをパートナーや子供のようにかわいがっている人、悩みの相談相手になってもらっている人等が、このタイプです。ペットを心から愛し、信頼関係を結んでいる人は、ペットを失った時のショックも当然大きいものになるでしょう。
後悔や自責の念を持ちやすい人
ペットは自分で生活の質を決めることはできません。飼い主がペットに対する責任を持っているからこそ、「仕事で留守にして寂しい思いをさせていたのではないか」「もっときちんと健康管理ができていればもっと長生きできたのではないか」「あの子を思ってやったことが苦しみになっていたのではないか」と1つ1つの決断に自責の念を感じ、罪悪感にさいなまれがちです。
ペットの死因が突然死だった人
最も辛いと言われている死因が、突然死です。病気や老衰などの前触れもなく、心の準備ができていない状態で死別してしまうのは大きな悲しみと苦しみになります。特に交通事故や事件などが原因だった場合は、なおさらその状況を受け入れがたいでしょう。このような場合、平静を保つことはかなり困難です。
悲しみを抑圧する人
正常な悲しみを率直に表現することができなかったり、正しい悲嘆のプロセスが抑えられたりするとペットロスが長引いてしまうことがあります。成人男性に生じやすいパターンで、「大の大人が身も世もなく泣くなんてみっともない」とか「男が泣き暮らすなんて格好悪い」という社会的な偏見により、成人男性が無意識的に悲しみを抑圧しがちだからだと言います。
悲嘆する本人の問題
「重大な喪失、死、悲しみを経験したことがない」という場合、悲しみを抑えることが難しくなります。また、ペットの死以外にも人生の問題を抱えていたり、身内や身近な人との別れや死が連続したりするような場合にも、ペットロスを長引かせることがあります。
本人を取り巻く環境の問題
「たかがペットだし、元気出しなよ」とか「新しいペットを飼えば良いじゃないか」など友人や家族からの支えや共感の言葉をもらえない人は、ペットロスから立ち直りにくくなるようです。
ペットロスの症状
ペットロスになると、精神的・身体的に様々な変化が起こることがあります。
精神的な症状としては、
- 孤独感や不安感に襲われる。
- 何をするにも集中できず、落ち着かない。
- 今まで夢中になっていたものにも興味がわかず、楽しみや喜びが感じられない。
- 後悔の念に駆られ、自分を責めてばかりいる。
- 獣医や家族の判断を疑問に思い、責め立てる。
- 亡くなったペットの姿が見えたり、声が聞こえたりすることがある。
等といったものがあります。身体的な症状としては、突然涙が出る、食欲不振・過食、腹痛・頭痛、倦怠感等があげられます。
これらの症状は、時間が経つにつれて次第に軽くなるものです。しかし、なかなか回復しない、もしくはどんどん悪化しているという場合、うつ病に移行している可能性があります。
乗り越えるためにできること
趣味やお出かけで気分をリフレッシュする
趣味に没頭したり、1人旅に出かけたりと自分を見つめなおし、心を整理できる時間を作ると良いかもしれません。気分転換や心を整理する方法は人それぞれですので、自分なりのリフレッシュ法を探して実践してみましょう。
悲しみを表現してみる
悲しみを素直に表現するのは大事なことです。悲しいときには泣き、身内や身近な人たちに思いのたけを吐き出してみましょう。自分が辛いと思っていることや、ペットへの謝罪や感謝の気持ちを書き出すと心を沈静化できるといいます。
ペット葬儀を行う
ペットの死に対しては、その死を弔って心の整理をつけることが大事です。ペットを人と同じように弔い、供養することでペットの死を現実のものとして受け入れましょう。
ペットとの思い出を形にする
ペットの写真やぬいぐるみを仏壇に飾ったり、毛や遺骨の一部をアクセサリーにして持ち運んだりすることで、ペットが存在した証を残すことができます。飼い主が望んだ形で供養することが、心の整理を推し進めることになるでしょう。
まとめ
ペットを亡くした直後は、自分の心が今どのような状態にあるのか気づきにくいものでしょう。しかし、自分がペットロスに陥っていると素直に認めるのは大事なことです。
認めたからといって、すぐには悲しみから立ち直ることはできません。「悲しんでいる自分」を客観的にとらえることで、どうしようもない思考のループから抜け出し、悲しみを和らげる道筋が開けるのです。
悲しみが薄れていくことに、罪悪感を覚える必要はありません。時間が経つにつれて悲しみを忘れていくのは、心を守るために必要なことなのです。ペットの安らかな眠りのためにも、「ごめんね」ではなく「ありがとう」の言葉をかけてあげましょう。